ソフトウェア構成管理の悪夢
紹介する理由
構成管理を甘く見ている、そもそも存在しないというプロジェクトが多数あります。実際、私が経験した中に構成管理と呼ぶべきものが存在したことはありません。構成管理と版管理を同一視している人も多数います。この本は構成管理の方法を教えるわけではありませんが、構成管理に失敗したら何が起きるかを教えています。この恐怖を現場で味わわないためには、よく学ばなければいけません。
基本情報
現時点の最終版 | 1版 | |
タイトル | ソフトウェア構成管理の悪夢―アンチパターン | |
原題 | AntiPatterns and Patterns in Software Configuration Management | |
著者 | ウイリアム・ブラウン(William J. Brown)、ヘイズ・マコルニック(Heys W. "Skip" McCormick Ⅲ)、スコット・トーマス(Scott W. Thomas) | |
監修者 | - | |
訳者 | 岩谷宏 | |
監訳者 | - | |
出版年 | 1999 | |
原出版年 | 1999 | |
出版社 | ソフトバンクパブリッシング | |
原出版社 | Wiley | |
紙ページ数 | 321 | |
定価 | ||
分野 | 構成管理 | |
続刊 | なし | |
著者による目的 | ソフトウェア開発の管理を支援する |
総評
品質5段階評価
目的合致性 | 4 | 怖さは伝わるため間接的に管理を向上させうる |
一貫性 | 5 | アンチパターン書として文句はない |
可読性 | 3 | 文はいいがレイアウトに難あり |
長さの合理性 | 4 | もう一つ踏み込んでくれても良かった |
網羅性 | 4 | 著者の中にはもう一冊分くらいは残っているはず |
専門性 | 5 | |
学習容易性 | 1 | 相当頭が良くないと必要レベルに達せない |
適応性5段階評価
エキスパート | 5 | 顧己せよ |
実務家 | 5 | たまに恐怖を思い出すといい |
上級者 | 5 | 現場についていくための必須知識 |
学習者 | 4 | 優先度はやや低いが個人で環境を作る勉強は必要 |
初学者 | 3 | まずは資料やサンプルの構成管理から |
所感
合格
良いところ
具体的な事実を元に、批判的な精神によって、恐ろしい事象の内実を明らかにしています。軽妙な口調はギャグのようにも受け取れますが、業界としては悪うに笑えない自虐ネタです。冷静に、こんなことになったらヤバい、という気持ちが出てきたら、成功です。楽しく読めて勉強になる本は嬉しいです。
欠格
悪いところ
アメリカのジョークをそのまま日本に持ち込んでも、合わないと考えるのが常識です。それを忘れて日本人に合わせたレイアウトを作れなかったことが問題です。20年前ともなれば、日本のエディトリアルデザインはクオリティー低かったんでしょう。内容はよくできているので、デザインさえ我慢すれば読めます。
雑感
その他
構成管理の中心はリビジョンとトレーサビリティーです。そこが保証されて初めてアクセシビリティーの議論ができます。構成管理というとChefとかAnsibleとかサーバー、インフラ系をイメージしがちですが、ソフトウェアにも構成管理は欠かせません。失敗の痛みを知ってこそ、成功を求めるモチベーションとなるでしょう。