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成長したければ本を読むのが一番。本選びに悩む人たちに指針を与えつつ、小遣いを稼ごうという趣旨のブログ。

発注者ビューガイドラインに学ぶ失敗しない外部設計

紹介する理由

発注者ビューガイドラインを知らない人も多いと思います。本を読めば分かりますが、IPAが出している資料です。本文はネットで無償配布されています。URLは変わりやすいので、ググってください。この知名度の低さ、皆無と言っていい普及活動の無さが苛立たしいので、せめてこの辺境の地で紹介しておきます。
この本が言及している共通フレームという文書も、IPAが出しています。本では2007を参照していて、書店へ行けばやはり2007が売られていますが、IPAのサイトでは2013を無償配布しています。読むならそちらを使いましょう。

基本情報
現時点の最終版 1版
タイトル 発注者ビューガイドラインに学ぶ失敗しない外部設計 ユーザー目線の設計ノウハウを伝授
原題 -
著者 実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会
監修者 -
訳者 -
監訳者 -
出版年 2008
原出版年 -
出版社 日経BP
原出版社 -
紙ページ数 147
定価  
分野 外部設計
続刊 なし(IPAサイトでの更新もなし)
著者による目的 利害関係が複雑化するIT開発の課題を解決するための一助となる
総評
品質5段階評価
目的合致性 3 理論の解説で終わっている
一貫性 5  
可読性 4 図表の文字が小さいか
長さの合理性 4 妥協ではないがもう一歩努力がほしい
網羅性 5 元の文書がよくできているため
専門性 5 とても素人には理解できない
学習容易性 5 前提が揃った読者ならば
適応性5段階評価
エキスパート 5 基本だからこそ気づきも多い(守破離の離)
実務家 5 KKDが通用する時代ではない(守破離の破)
上級者 5 このレベルでないと理解に達しない(守破離の守)
学習者 3 雰囲気くらい知っていて損は無い
初学者 2 本棚の見えるところに置いておきたい
所感

合格

良いところ

本家の発注者ビューガイドライン自体は、平易に書いてあるものの抽象的なために理解を拒む面があります。なにせIPAは国の直轄組織ですから、役人気質丸出しです。文書もことごとく分かりづらいです。折角の素晴らしい研究の数々が、ただ読みづらいというだけで敬遠されるのは悲しいことです。そのハードルを下げる役目を果たす意味で、この本はとても優秀です。

欠格

悪いところ

あまりにも高度な内容なので、自分で苦労して設計し、折衝し、挫折し、苦悩してきた人間でなければ、本当の意味で理解するのは困難です。読んで分かった気になればまだいいですが、全然分からなくて放り出されては本末転倒です。この本の入り口になるような本が別に必要だったかもしれません。
抽象的な発注者ビューガイドラインを、具体的に理解できるレベルに落とし込んでいることは評価できます。しかし、具体的な活動に結びつくような、実践的な内容が無に等しいのは残念です。こんな内容を全部実践していたら、途方もないお金と時間と人材を使います。コスト的に無理なんです。コストとリスクのバランスを取るのは経営判断だと言えばそれまでですが、それが分かっているなら経営判断の拠り所となるような情報源を示してほしい。結局リスクを負担するのが現場になってしまうのなら、課題の解決など遠い夢の話になってしまいます。

雑感

その他

いい内容なのですが、本としての立ち位置がかなり微妙です。だから受けが悪かったのだろうと思っています。役人ですからね、マーケットが読めないのは当然でしょう。だからといって、発注者ビューガイドラインそのものの価値が高いことには変わりないし、この本の存在意義を失うわけではありません。本を買うお金がどうのと言うなら、本家の資料をタダでダウンロードすればいい。要件をまとめる技術と同じくらい、要件を合意する技術も大事です。