実践テスト駆動開発
紹介する理由
TDDの本です。まえがきにある通り、TDD自体の解説書なら他に五万とあります。それでもこの本が有用なのは、具体的だから。それがどの程度実践的なのかは別として。
具体的だということは、一般化されていないということです。自分の目の前にある具体的な課題の解決に向けて、自分の頭で応用しなければならないということです。当たり前ですけど。抽象論は必要です。基礎とは常に抽象的なものです。だから「基礎」と言いながら具体論を述べる本があったら、偽物です。この本は基礎を知っている人向けだからこそ、踏み込んだ具体論を展開します。そこにこの本の価値があります。
基本情報
実践テスト駆動開発 テストに導かれてオブジェクト指向ソフトウェアを育て (Object oriented selection) [ スティーブ・フリーマン ] |
現時点の最終版 | 初版 |
タイトル | 実践テスト駆動開発 | |
原題 | Growing Object-Oriented Software, Guided by Tests | |
著者 | Steve Freeman、Nat Pryce | |
監修者 | - | |
訳者 | 和智 右桂、高木 正弘 | |
監訳者 | - | |
出版年 | 2012 | |
原出版年 | 2009 | |
出版社 | 翔泳社 | |
原出版社 | Addison-Wesley Professional | |
紙ページ数 | 400 | |
定価 | 4536 | |
分野 | 開発プロセス | |
続刊 | なし | |
著者による目的 | テスト駆動開発のプラクティスを成功させるためにプロセスの取り込み方を教える。 |
総評
品質5段階評価
目的合致性 | 5 | |
一貫性 | 5 | |
可読性 | 3 | 妙な手書きで集中が削がれる |
長さの合理性 | 4 | 詰め込んだ感が強い |
網羅性 | 4 | プロセスの解説に完全網羅は無い |
専門性 | 4 | テスト技法は知っている前提 |
学習容易性 | 4 | カウボーイには厳しいか |
適応性5段階評価
エキスパート | 3 | |
実務家 | 4 | |
上級者 | 3 | |
学習者 | 3 | |
初学者 | 1 |
所感
合格
良いところ
技法ではなくプロセスに重点を置いた解説書は少ないです。成功している本はわずかです。無駄に分厚いわけではありません。
欠格
悪いところ
翻訳本のノリが日本人の感覚から外れすぎている印象です。題材の「スナイパー」もなんだかよく分かりません。ノリで書いている感じがもっと少なければ、好みが分かれるような残念なことにはならなかったでしょう。そこを翻訳でカバーするのも出版社の仕事だと思うのですが。
雑感
その他
内容は素晴らしいのに、悪ノリが凄くて読む気が失せる。翻訳本の一番駄目なパターンです。なぜそれを日本の出版社は改善しないのか? なぜ訳者はそこに疑問を投じないのか? 学ぶべきことがギッシリ詰まっている本が、日本の風土に合わないという理由で読まれないなら、日本の文化はいつまでも旧時代のままです。どうにかならないのか。