.NETのクラスライブラリ設計
古い本です。.NETでライブラリーを開発する時の指針が書かれています。既に10年の月日が流れて、そのまま言うことを聞いていれば大丈夫という内容ではなくなっています。ラムダくらいは入っていますが。
それでも、ライブラリーを作るとはどういうことなのか、オブジェクト指向言語においてクラスライブラリーをどう捉えておけばいいのか、参考になる知見が多々あります。技術が古いから読む価値が無い、と知ったような口を利く輩もいますが、古い部分は新しい知識に置き換えてエッセンスを吸収するのは読者の必須スキルです。専門書を読むというのはそういうことです。入門書とリファレンスを除けば、価値を失う本などありません。
現時点の最終版 | 初版(Kindle) | |
タイトル | .NETのクラスライブラリ設計 開発チーム直伝の設計原則,コーディング標準,パターン | |
原題 | Framework Design Guidelines: Conventions, Idioms, and Patterns for Reusable .NET Libraries, 2nd Edition | |
著者 | クリストフ・ツヴァリナ(Krzysztof Cwalina)、ブラッド・エイブラムス(Brad Abrams) | |
監修者 | - | |
訳者 | 藤原雄介 | |
監訳者 | - | |
出版年 | 2009 | |
原出版年 | 2009 | |
出版社 | 日経BP | |
原出版社 | Addison-Wesley | |
紙ページ数 | 335 | |
定価 | 4500 | |
分野 | 設計 | |
続刊 | なし | |
著者による目的 | 再利用可能なオブジェクト指向ライブラリである、フレームワークの設計に関するベストプラクティスを提供する。 |
目的合致性 | 5 | |
一貫性 | 5 | |
可読性 | 4 | 文化の違いは仕方ない |
長さの合理性 | 4 | |
網羅性 | 4 | |
専門性 | 5 | |
学習容易性 | 4 | OOP自体の習熟は前提 |
エキスパート | 3 | 自己流に傾かないように |
実務家 | 4 | |
上級者 | 5 | 毎日読み返してもいい |
学習者 | 3 | |
初学者 | 1 |
合格
.NET標準ライブラリーの設計理念を解説しているようなものなので、中の人が何を考えてこうなったのか、APIを見れば想像がつくようになります。あとはそれを真似してもいいし、自分の感覚を盛り込んでもいい。標準APIと違和感の無い独自APIを設計する場合は、極力この本に書かれたガイドラインに沿うといいでしょう。細かい点に対する著者たちの所感もたっぷり書かれていて、勉強になります。
欠格
英語文化なのですが、論理的な区切りを明確に設けることで、今何を読んでいるのか読者が迷わなくて済むようになっています。これが日本語文化の人間にとっては、過度な読みやすさの追求に感じられ、ページをめくる度にうっとうしくなります。翻訳する時は、内容はもちろん、文化も変換してほしいものです。内容が訳せている前提の話です。この本の翻訳は悪くありません。
雑感
目に触れる部分の開発指南書が売りやすいのは当然です。しかし本当に難しいのはその奥にあるAPIを適切に開発することです。その部分の本が圧倒的に少ないことが残念でなりません。だからこういう本に出会うと嬉しくなります。今は電子で流通しているだけですが、たくさんの人に読んでほしいです。